移住者体験談
鈴木 花子(仮名)
卒論は「京都の日本庭園と景観条例」 文学部出身の私が、山口にUターンして車の営業職を選んだ理由
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鈴木 花子さん(仮名)は防府市のご出身。防府高校から立命館大学に進学し、2024年に新卒でモビリティライフグループ株式会社(山口スズキ)にUターン就職しました。人と話すことに苦手意識があったものの、それを克服したいと接客のアルバイトにも挑戦、さらに現在は営業職として店舗を訪れたお客様の対応にあたっています。学生時代の生活や就活、仕事、山口の暮らしについて鈴木さんに伺いました。
古典文学好きが高じていざ京都へ、国語の教員を目指すも理想と異なる違和感が…
県外の大学に進学しようと考えたのはどうしてですか?

鈴木さん:子どもの頃から読書が好きで、高校時代は、部活は文芸部に入っていて、小説を書いてみんなで部誌にまとめて文化祭で販売したりしていました。高校のときは、平安、鎌倉時代の古典がとくに好きだったので、オープンキャンパスで立命館大学に行ったときに京都に住むのもいいなあ、と思ったんです。
古典が好きだったら京都はぴったりの場所ですね。大学ではどのような勉強をしたのですか?
鈴木さん:立命館大学では日本文学を専攻しました。ゼミの先生は鎌倉時代の専門だったのですが、文学作品だけに終始するのでなく時代背景など含めて広い視野で物事を見なさい、というような指導方針で。それで卒論では、日本庭園をテーマにして、京都の景観に関する条例との兼ね合いを研究しました。
京都のまちづくり条例は、景観や環境を守りながら、良いまちづくりを進めるためのもので、この条例に沿って建物の高さや看板の規制など、いろいろなルールが決められています。たとえば京都のセブンイレブンの看板や店舗の色に、茶色や白色、黒などの落ち着いた色が使われているのが有名ですね。そのようなルールをもとに作られた街の様子を実際に見に行って、写真を撮ったり、条例を読んで照らし合わせたりして本当に理にかなったものなのかについて卒論を書きました。
日本文学からの、条例ですか…すごいですね。鈴木さんの京都のおすすめスポットはありますか?
石庭で有名な龍安寺の近くに住んでいたのですが、空いた時間は寺社仏閣巡りや散歩を楽しんでいました。私が京都にいた頃はちょうどコロナ禍で観光客も少なくて。嵐山に足を運ぶことも多かったのですが、そこにある光源氏のモデルと言われる源融(みなもとのとおる)ゆかりの清凉寺というお寺の、落ち着いた雰囲気ときれいな庭園がとても好きでした。
学生時代は卒業後の進路や自分の将来について、どのように考えていましたか?
鈴木さん:昔から国語が好きだったのですが、高校の国語の先生がとてもいい先生で、教科書以外のお話も面白くて。高校3年生のときの担任もすごくいい先生だったんです。それで、学校の先生になりたいと考えて2回生のときに教職課程を履修しました。ただ、勉強しているうちに今の学校の制度は児童や生徒にとって、本当にいいものなのだろうか、自分が考えていた理想とはだいぶ違うな、と違和感をもつようになってしまって、教職課程は最初の1年でやめました。それから教師以外だったら、一般企業か公務員かなあ、と考えるようになりました。
離れて気づいた「ゆったりのどかで広々」な山口の良さと、就活ノープランから見えた道

もともと就職のタイミングで山口にUターンしようと考えていたんですか?
鈴木さん:そうですね。京都も4年間住むには楽しかったのですが、京都の言葉やぎゅっとした密度の高い街の雰囲気にあまり馴染めなくて、その後も京都でずっと生活していくというのはイメージが持てなかったんです。高校時代は山口って何もないなあ、と思ったこともあったんですけど、一度離れてみたらあらためて、ゆったりのどかな広々した感じがいいなあと思って。
旅行などで都会に行くのはいいんですけど、仕事をして生活するとなったら同級生や家族など、知っている人がたくさんいるところがよいと思いました。とくに社会人になりたての時期は安心感がありました。今は両親と弟もいる実家暮らしです。
大学時代に京都でも友だちができると思いますが、それでも山口に?
鈴木さん:大学時代の仲良しの友だちは、沖縄など他県出身の子も多かったですね。結局みんなUターンするなどして住む場所はバラバラになってしまいました。中学高校時代からの地元の友だちは今もつながっています。私はお休みが平日なので、なかなか会う機会はないのですが、みんな社会人2年目になって慣れて余裕が出てきた頃だと思うので、そろそろ会いたいですね。
そうすると、希望の業界や業種、職種で仕事を選ぶというより、「山口で働く」ことが最優先だったということですか?
鈴木さん:はい、そうです。卒論を書く過程で条例を読むのも慣れていたし、景観保護にも関心があったし、山口をよくしていきたい、という地元愛のような気持ちもあって、4回生の春に山口県庁の公務員試験を受けたのですが、残念ながら不合格でした。
公務員試験の勉強をしていたので、エントリーシートを書いたりインターンに行ったりといった、一般的な就活というものを全然していなくて。正直、何をすればいいんだろう…。という状況でした(苦笑)
話すのが苦手でも、あえて挑戦――人と接する営業職に

その後、県の就職フェアに参加したということですが、就職フェアのことは何で知りましたか?
鈴木さん:4回生の秋になってから県主催の就職フェアに行きました。大学が中・四国出身の学生向けにメールで配信していた就職活動情報で知りまして。事前に、参加予定の企業のウェブサイトを見たり、関連企業のチェックはしていきました。
その就職フェアでお話した現在の会社と、もう1社とで最後まで迷いました。現在の勤め先である山口日産グループは、そのフェアのときも分からないことを質問しやすい雰囲気だったので、実際の職場も相談しやすい雰囲気なのではないかと思ったんです。もう1社は、雰囲気はとても良かったのですが、「一人でやる仕事」が多い業務内容でした。それよりはいろいろな人と協力したり、チームで働く環境に身を置くことを選びました。分からないことは教えてもらい仕事を覚えながら、同僚と協力して働く、というのができるのはこちらだなと。
あと、採用担当の高橋さん(同社)がすごく話が上手で、「君は営業にすごく向いていると思う」って言われて乗せられちゃったんです。今思えばみんなにそう言ってるんじゃないかな、と思いますが(笑)
インタビューの事前にやりとりした中で「もともと人と話すことが得意ではない」言っておられましたよね?
人と話すことに苦手意識があったのですが、ずっとそれを克服したいと思っていて営業職に挑戦しました。学生時代にコンビニで、早朝シフトのアルバイトをしていたとき、接客は意外と楽しいな、と最初に思いました。今でも、思うように話せないな、とかうまく伝わらないな、と思うこともあります。とくに土日はたくさんのお客様がご来店されるので、対応が続いた後は疲れが出てしまうこともあります。
でも、人と話すのがもともと得意ではないからこそ、ちゃんと伝わったときや納得していただいて成約に繋がったときはやりがいを感じます。営業として、がつがつ行ける方ではないですが、「対応してくれたのがあなたで本当に良かった」と言ってくださるお客様がいまして。そういうときは、丁寧に真面目に、と自分なりに心がけて仕事をしていてよかったと思います。昔よりは人と話せるようになったと思います。
あえて営業とは驚きです。では、他のカーディーラーは検討しなかったのですか?
鈴木さん:少し検討しました。でも就職活動をしていた頃は私の運転免許はオートマ限定だったんですが、別のカーディーラーではオートマ限定免許では応募できなかったんです。
結局今の会社に入社後に、マニュアルの免許はとりましたが。最初はマニュアル車を動かさないといけないときは、同僚にお願いしていたのですが、やはり自分が販売する車は自分で動かしたり、しっかり自分で準備したいと思って、今年の1月に講習を受けてオートマ限定を解除しました。
同僚や先輩、上司とのコミュニケーションはどうですか?
鈴木さん:同期入社は、同じ店舗に私の他にもう1人営業と、他店舗に営業が3人、他に整備士やアシスタントの人もいて、ときどき研修などで顔を合わせます。先輩は皆さん優しいです。同じ店舗の先輩が、営業成績もすごくいい方で忙しくされているのですが、それでも私が質問したらいつでも答えてくれて、わからないことあったら「それは一緒にやるからね」って言ってくれます。
その先輩は、お客様がどれだけ車を買う気があるかといった先入観なしに、新型の車の紹介などしっかりと情報を提供していて、それが、お客様が次の車を考えるきっかけに繋がっているので、すごいなあと思って尊敬しています。仕事は大変なこともありますが、先輩や上司の方が自分の頑張りをきちんと見てくださるので私も頑張れています。
大人になって、車があると、広がる世界

休みの日の過ごし方を教えてください。
鈴木さん:休日はドライブしたり読書したり、最近はよくバッティングセンターに行きます。バッティングセンターは、会社の同期と一緒に行ったのがきっかけだったかな。運動は全然やってこなかったんですけど、当たるんだ、みたいな(笑)
昨日は音楽をかけながら上関まで海を見にドライブしました。山口は山も海も近いので自然を感じられますし、どこでも道路がきれいなので走りやすいです。車で少し行けば、買い物のできるお店はあるので良いところだと思います。高校生までは、車がないとどこにも行けなくて不自由でしたが、今は自由にどこへでも行けるので楽しいです。

最後に就職活動中の学生さんへのメッセージをお願いします。
鈴木さん:私はすごく熱心に就活をしたとは言えないのですが、無事、希望通り山口にUターン就職して現在楽しく働けています。この記事を読んでくれるような方や就職フェアに参加しようと考えている方は、すでに行動していると言えるのですから、それだけですごいことだと思いますし、きっとよい実を結ぶはずです
本日はありがとうございました。
人と話すことが苦手だったということですが、それを克服しようと、コンビニでアルバイトをしたり、営業職に就いたり、実にチャレンジ精神が旺盛な鈴木さん。もともと読書が好きで、高校時代は自ら文章を書いていただけあって、インタビューにも豊富なボキャブラリーで答えてくれました。Uターン就職する学生さんには、別の場所で就職活動をする中で地元も就職先の一つとして考える人と、最初から卒業後は地元に戻って就職したいと考える人がいます。鈴木さんは後者で、友人や家族がいてゆったりした雰囲気、安心できる環境で生活したいと、当初から山口県での就職を望んでいました。就職活動中は、どうしたらいいのだろうと、迷うことや悩むこともありますが、そのようなときは一度立ち止まって、鈴木さんのように自分が送りたい生活のイメージを大事にして考えてみるのもよいと思います。
鈴木 花子(仮名)さん
防府市出身。防府高校から立命館大学に進学し、2024年に新卒でモビリティライフグループ株式会社(山口スズキ)にUターン就職。
人と話すことに苦手意識があったものの、それを克服したいと接客のアルバイトにも挑戦、さらに現在は営業職として店舗を訪れたお客様の対応にあたっている。