移住者体験談
増野亜土さん・陸子
コミュニティーが小さい分、都会に比べて出会いのチャンスは多いと思います。
- 光市
- 増野亜土さん・陸子
山口県に戻ってこられる前は、どのようなことをされていたんですか?
亜土さん)高校を卒業後、進学のために上京しました。大学生時代は、学校にも行かず演劇ばっかりやっていましたね(笑)。20歳で劇団に入ってそこで12年間、その後フリーで8年間、合計20年ほど、東京で演劇活動をしていました。
陸子さん)私は、東京で生まれて、千葉県の船橋で育ちました。高校を卒業してすぐに、劇団青年座の研究生になりました。フリーで演劇活動をしているときに、主人の劇団の舞台に客演として参加したことをきっかけで出会いました。そして2人で企画会社を立ち上げて、様々な活動をしていました。
亜土さん)知り合いの校長先生から「自分の気持ちをなかなか素直に表現することができない子どもが多いんだけど、どうにかならないだろうか?」という相談を受けまして。それで、演劇の手法を使った「自己表現」のワークショップをやっていました。それをきっかけに、子どもの教育について興味を持つようになりました。
陸子さん)長女が生まれたのも大きなきっかけでしたね。フリーランスだったので、経済的には常に不安定でした。子どもの将来のことを考えたら、このままではいけないなと。また、子育てをするんだったら田舎でしたいというのもありましたね。主人が、ワークショップで子どもたちと接しているの姿を見ていて、教員という仕事が合っているんじゃないかなって思ってましたね。
亜土さん)妻からのアドバイス、そして知り合いの校長先生のススメもあって、36歳のときに、小学校の教員を目指そうと決めました。教員免許を持っていなかったので、教員免許を取得する認定試験を受けるところからのスタートでした。たまたまインターネットで、山口県の社会人枠の募集を見つけて、ダメもとで受験したら、運よく合格することができました。それで40歳のときに光市にUターンすることになりました。今考えると、本当によく受かったなと思いますね。
光市での生活に不安やとまどいはありませんでしたか?
亜土さん)私は地元ということもありますし、小学校教員としての職責を果たすのに一生懸命だったので、不安なはありませんでした。でも妻は、初めての土地で、2人目を妊娠していたので、不安はあったと思います。
陸子さん)海外に行くわけでもないんだからと、そんなに心配はしていませんでした。でも、実際に暮らしてみると、食べ物や価値観の違いに少し戸惑いましたね。一番とまどったのは、「人との距離感」です。東京の下町って、実はとってもおせっかいなんですね。でも光の人は、迷惑にならないように、少し離れて様子を見ているんですよね。最初は、人との距離感の違いが分からなくて「光市の人はなんか冷めたいな」と感じていました。でもしばらくしたら、お願いをしたらとっても一生懸命にしてくださるという県民性が分かってきました。これって、いろいろと仕掛けたい自分には、実はものすごいチャンスじなんじゃないかと(笑)。自分からドンドン動いて、色々な人を巻き込んでいけば、何か面白いことができるんじゃないかとワクワクしましたね。
新しいお仕事はどうですか?
亜土さん)最初は、現在の子どもたちを取り巻く現状がわからなかったんですが、中に入ってみたら、子どものこと、保護者のこと、地域のことがよく見えるようになってきました。教員という仕事は本当に面白いなと思います。これほど、創造的な場所はないんじゃないかと思いますね。
陸子さん)2016年の1月末に、女性が光輝ける場所というコンセプトのカフェ“発信キッチン”をオープンしました。東京にいた時からずっと自分たちの場所が欲しいと思っていたので、やっとその夢が叶いましたね。
山口県のいいところはどんなところだと思われますか?
亜土さん)教育という面で考えると、東京は、情報・モノ・選択肢・価値観が多すぎることで、大切なモノを見失ってしまうということがあるように思います。学習対象が身近にあるので、触れたり、体験したりすることができるのが、山口県のいいところだと思います。情報が少ないことで、より創造的になれると思います。また、コミュにティーが小さい分、出会いのチャンスは多いかもしれませんね。
陸子さん)東京にいたときは、あまりにも情報がありすぎて、いっぱいいっぱいになっている自分がいました。情報が少ないということが、逆にいいところなんだと思いますね。それと、とても環境がいいので、近所を散歩するだけで豊かな気持ちになれます。山口県で子育てをして良かったと思います。
最後に、将来の夢をお聞かせいただけますか?
陸子さん)まずは“発信キッチン”を地域の方々がゆっくりとくつろげる、地域に寄り添う場所にしていきたいですね。そして、この場所で、企画プロデュースを手がけた「米のおっぱい」をはじめ、まだまだ地域に眠っている商品や人など、光市の隠れた魅力を掘り起こして、様々な人に知っていただけるように“発信”をして、地域を盛り上げるお手伝いをしたいですね。そして将来的には、演劇や音楽などの催しも企画していければと思います。
亜土さん)先日、2分の1成人式で「大人になるってどういうこと」というテーマで演劇をやりました。演劇を経験したことで、子どもたちが持っている可能性が大きく引き出されたと思います。子どもたちはもちろん、保護者にも大変好評でしたので、今後もぜひ続けていきたいですね。また、演劇の手法を活かして、地域活性化のお手伝いができればいいなと思います。
増野亜土さん・陸子さん
ましの・あど / ましの・むつこ/光市在住
光市出身。大学進学を機に上京。在学中に演劇に魅了され、劇団やフリーでの活動など合わせて20年の演劇生活をおくる。劇団時代に客演として参加した奥様と出会い結婚。その後、教員免許を取得し、40歳の時に光市にUターン。
亜土さんは小学校教員、陸子さんは女性が光輝ける場所というコンセプトのカフェ「発信キッチン」を営む。