移住者体験談
小元真一
暮らしていて困ることはないし、程よく田舎。 「何もない」からこそ、この町で店を続ける面白さがあります。
- 防府市
- 小元真一
- 起業・創業
山口県に来られる前は、どんなことをされていたんですか?
出身は奄美大島です。山口県に来る前は、あちこちに旅に出ていました。金なしツアーですね。日本国内から、中東とか中南米とか、ヨーロッパや北アフリカまで。旅先で現地の方に泊めてもらって、その時に、各地の料理を教わりました。カレーも、元々よく作っていたんですが、旅先で教わった知識が今につながっています。山口県に来たのは15年前のことです。理由があるわけではなくて、なんとなく、流れ着いたという感じですね。
お店について教えてください。
お店は2年前(2017年)に始めました。物件探しから始まり、店内の改装、仕込み、営業まで、基本的に一人で全て行なっています。物件が決まってから調べたんですが、この辺りは50年ほど前、結構栄えた繁華街だったんだとか。昔から、流行や新しいものに敏感だったここの土地柄は、「新しい、これからの日本のカレーを作っていこう」という、この店のコンセプトにもつながりました。
うちのカレーのこだわりは、スパイスですね。香りももちろんですが、お客さまに合わせたスパイスを配合しています。例えば、同じメニューを頼まれても、その日のお客さまの体調や気分を聞き出し、少しずつスパイスを変えます。これが、本来のインドカレーのやり方なんです。薬膳に近いでしょうか。僕が今目指しているのは、伝統的なインドの作り方に、日本人の味覚に合わせた味つけを足して、新しい日本のカレーを作ることです。
注文を受けてから作り始めるので、一般のカレー屋さんよりお出しするに時間がかかるかもしれません。でも、「外食する」って、お客さまにとってはちょっとした贅沢ですよね。だから、ひとりひとりとコミュニケーションをとりながら、「本当にオススメしたいもの」をカスタマイズできたらと思っています。
カレーや添え物は、全て防府市の農家さんから直接仕入れた、旬の野菜で作っています。
育っていく過程がちゃんと見えるので、地元の食材にこだわっています。 県外のイベントにも積極的に出店するようにしています。出張の時も、できる限り現地にスパイスを持っていきます。食べる直前に調理しないと、香りがなくなってしまうので。最近では、全国規模のカレーフェスにもお誘いいただくようになりました。
防府市に住んでみてどうですか?
僕は防府駅のすぐ近くに住んでいるのですが、程よく田舎だなあと感じます。暮らしていくために困ることはないし、駅や商店街や大型商業施設がまとまっている。僕が島出身だからなのかもしれませんが、「コンパクトな町」という印象です。島って、実は結構生活範囲が広いんですよね。家同士が離れていたり、坂道や砂利道が多くて自転車が乗りにくかったり。山口県は車社会と言われますが、意外と自転車で生活は事足るんですよ。物価も安いし、住みやすいです。
地元の方は、「何もない」と話されることが多いのですが、「何もないから面白い」と思っています。田舎町でやるからこその面白さがある。都会の方が発展しているように見えますが、実は都会って地方の文化が集合しているんじゃないかと思います。
例えば同じ店を出しても、都会と田舎では広がり方が違う。田舎では、その土地ならではの生活が根付いていて、お店も地域に合わせた独自の発展を遂げたりするんです。それが結果として、他にはない文化になる。すると、むしろ都会の人が「新しい」「珍しい」と感じて、田舎に来たがったりしますよね。
何もないからこそ、外からやってきた物事を取り込んで、面白い発展をしていくんだと思います。田舎で暮らしている方々自身がそういう可能性に気がつくと、大きな力になるんじゃないかな。さらにそれが若い世代に伝わって、今後につながっていくといいですよね。
これからも防府市でお店を続けていくことについて
お店が2年目を迎えて、少しずつ地元の方とも交流するようになりました。お世話になっている方々への感謝を忘れずに、手の届く範囲の関係を大切にしていきたいです。それが広がっていくと、自然と地域全体がもっと活発になっていくんじゃないかなと思います。
小元真一さん
こもと・しんいち/防府市在住
移住前は奄美大島から、日本だけでなく世界中を旅しながら、現地の料理を覚えていった。2004年、防府市にIターン。2017年に同地でカレー食堂を開く。地元の食材を使い、お客さま一人ひとりに合わせたスパイスを配合する、こだわりのカレーを提供。