移住者体験談
岩崎 喜美弥
海が見える景色に惹かれて移住を決意。 ここは大人の遊び場です!
- 柳井市
- 岩崎 喜美弥
- 起業・創業
移住する前はどちらにいらしたのですか?
生まれも育ちも浅草、人情に厚い下町で育ちました。移住する前は、東京都品川区のマンションに住んでいました。東京タワーやお台場の花火大会が見える眺望をとても気に入っていたのですが、周りに新しいビルが建ったことで見られなくなり、非常に残念に感じていたんです。追い打ちをかけるように3.11の東日本大震災やPM2.5の影響があり、田舎暮らしについて考えるようになりました。それに、以前からガーデニングが趣味で、いつか庭で土いじりをしたいという思いもありました。加えて、インターネットが発達したおかげで、都会と地方との差をあまり感じなくなってきて、東京に住み続けることに疑問を感じるようになったんです。
いつから移住を考え始めたのですか?
漠然と考え始めたのは約3年前です。夫が貿易コンサルタントをしているので、最初の頃は海外も含めて候補地を探していましたが、食事のおいしさや夫婦共に温泉が好きなことから、1年前から日本に絞って本格的に物件を探し始めました。軽井沢にはじまり奄美大島、沖縄、石垣島、兵庫、岡山、広島と見て回り、最後に辿りついたのが周防大島。でも、なかなか気に入った物件が見つからず。山口で見つからなかったら、移住そのものを諦めようと思っていたとき、柳井市の担当者から空き家バンクに登録されていたこの物件を紹介されて、移住を即決しました。夫は驚いていましたが、私が言い出したら聞かない性格だと知っているので、すぐに承諾してくれました(笑)。
即決した決め手は何だったのですか?
一番の決め手は海が見えるここからの景色です。晴れた日には遠く四国も眺めることができるんですよ!でも、唯一の気がかりは住まいでした。現在住んでいるのは築150年の古民家なのですが、空き家になってから80年という年月が経っていて、周りには背丈ほどある草が生えていたんです。でも、30年前にリフォームされていた上、以前の所有者の親戚の方が定期的に風を通してくださっていたので、思っていたよりも状態が良かったのが幸いでした。また、リフォームの際に井戸を掘り直し、浄化槽も付け替えてくださっていたのでラッキーでしたね! そこで、東京から友人の大工を呼び、フローリングを張り替え、漆喰を塗り、およそ半年かけてリノベーション。東京の友人たちは「もって3カ月だね」と笑っていましたが、メールでやりとりするうちに家の変貌ぶりを楽しみ、応援してくれるようになりました。現在は、庭や裏山の整備と2020年1月に立ち上げた新規事業で忙しい毎日を送っています。
どうして新規事業を立ち上げられたのですか?
地域の里山の多くでは、放置された竹が侵食する竹害が起きています。移住先の裏山にも竹がたくさん広がっています。その竹を有効活用して、地域の課題解決や地域ブランド化に貢献できるのではないかと考えて、竹炭事業を立ち上げました。創業資金は、有楽町の「ふるさと回帰支援センター」に通っていたときに担当者から教えていただいた「やまぐち創業補助金」を活用して、窯やチェーンソーを買う費用に充てました。今は伐採した竹を乾かしている段階。窯で焼ける日が待ち遠しいです。
山口での暮らしはいかがですか?
近くに海や山、温泉もあるので、すぐに旅行気分を味わえます(笑)。最初はご近所さんに警戒されてしまったのですが、私が重機を操作して作業道を作ったり、畑仕事をしたりする姿を見るうちに、こちらの本気度を分かってくださったみたいで。今では、農作物やイノシシ肉をくださったり、餅つきに呼んでくださったりと、とてもよくしていただいています。実は、移住する前に狩猟免許を取得していたのですが、当分の間、出番はなさそうですね(笑)。残念なのは、スーパーで「ちくわぶ」が買えないこと。東京出身の私にとって、おでんやすきやきには欠かせない食べ物なので、ちょっぴり恋しいですね(笑)。
何か困ったことはありませんでしたか?
山の上にある自宅までの道幅が狭いため、運転するのは大変ではありますが、住んでみると意外に便利なんですよ!近くに24時間営業のスーパーもあるし、ピザのデリバリーも頼めるので、日常生活を送る上で不便を感じたことはありません。しょっちゅう買い物に出掛けられないと予想して、巨大な冷蔵庫を買っていたんですけどね(笑)。一つ困ったのは、インターネット回線が通っていなかったことです。でも、夫がいろいろ調べてくれて、海外の通信会社のWi-Fiルーターを使うことに。通信制限がないので、今は快適なインターネットライフを楽しんでいます。
山口の魅力はどんなところだと思われますか?
とにかく人が優しいですね!東京から引っ越してきたことを伝えると、どこに行っても「ようこそおいでくださいました!」と歓迎してくださるので驚きました。それに、畑仕事などで体を動かすことが多いからでしょうか、みなさんとてもパワフル! 年齢を聞いてビックリすることが多いですね。移住するまではのんびり暮らせるのかなと思っていましたが、実際に住んでみると田舎暮らしって意外とやることがたくさんあって…結構忙しいんだなって実感しています(笑)。
移住を考えている方へ、何かアドバイスはありますか?
以前のライフスタイルをもちこんではダメ。郷に入れば郷に従え。あくまでも「よそ者」という自覚をもって、積極的に地域に溶け込む努力をした方がいいと思います。東京に住んでいるときは、ご近所付き合いはほとんどない状態でしたが、今ではご近所から野菜や苗をいただいたり、餅つきに呼ばれたりと、仲良くさせていただいています。ご近所さんあっての我が家だなって実感しています。それから、何かをいただいたら「ごちそうさまでした」「ありがとうございました」と挨拶する、作ったものでお返しをするなど、人として当たり前の礼儀を忘れないことも大事だと思います。
最後に、これからの夢をお聞かせください。
まずは、竹炭を使ったビジネスをできるだけ早く軌道に乗せることですね。竹炭そのものを販売するだけでは大きな利益を生み出すのが難しいので、どう付加価値をつけていくかが今後の課題です。さまざまな商品を開発して、ゆくゆくは海外で販売できたらいいなと考えています。竹炭が軌道に乗ったら、この景色を独り占めするのはもったいないので、1日1組限定の体験型民宿も開きたいですね。ここは大人の遊び場。ご近所の農家さんとコラボしてみかん狩りをしたり、釣った魚でバーベキューをしたり…ここを訪れた方に存分に楽しんでいただきたいです!
岩崎 喜美弥さん
いわさき・きみや/柳井市在住
58歳。東京都台東区浅草出身。22歳で結婚。健康食品会社の総務を16年間務めた後、早期退職。専業主婦として過ごす。2019年9月、柳井市伊保庄に移住。2020年1月、工房エトランゼを立ち上げる。