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移住者体験談

楳澤 しのぶ

ただパンを売るだけでなく、地元の魅力を伝えたい。鹿野の財産は、何より人なんです。

  • 周南市
  • 楳澤 しのぶ
  • 起業・創業
楳澤 しのぶ

Uターンされる前はどちらにいらしたのですか?

福岡県です。調理の専門学校に入るタイミングで、山口県を出ました。
当時は「鹿野には何もない」と思っていましたよ。街へ行くにも遠くて不便だし、やっぱり都会への憧れもありました。専門学校を卒業した後も、福岡県で飲食関係の会社に就職して、結婚、出産も経験しました。同じく料理人の夫とカレー屋を10年間、2人で営んでいました。

画像:山口県へのUターンで開業・創業した先輩 仕事風景 その2

Uターンを決めた理由はなんでしょう?

いろいろなことが繋がったんですが、決定打は小麦粉との出会いです。
カレー屋はお陰様で繁盛していたんですが、一方で凄く忙しくて。自分たちのこだわりも強かったのですが、その分、休みのない毎日でした。疲れも溜まっていったし、「新メニューを作らなきゃ」「経営やお店の回転のことを考えなきゃ」と追われるばかりでだんだん辛くなってきて。食べる人のことを思いやる余裕がない、そんな状況でお客様に「ありがとう」と言われることに、後ろめたさを感じていました。
その頃から「あれ、私もっと美味しいものを知ってるな」と思うようになりました。確かに自分の店で出しているカレーは自信があるし、都会は美味しいものや目新しいものがたくさんあって刺激的です。だけど、作ってくれた人のことを考えたり、食べる人を想うような、気持ちのやりとりがないことに、モヤモヤしていました。それで考えてみたら、「私の知っている美味しいもの」って故郷の食べ物だなあと思い当たったんです。
ちょうどそんな折に、お客様から山口県産の小麦粉「せときらら」を頂きました。試しにパンを焼いてみたら、とても美味しかったんです。「これだ!」と思いました。本当に、光が見えたような気がしました。
そこから、「鹿野でパン屋をやりたい!」と決めたんです。

画像:山口県へのUターンで開業・創業した先輩 仕事風景 その2

そのことに対して、ご家族の反応はいかがでしたか?

鹿野でパン屋を始めることには、反対はありませんでした。昔から、互いのやりたいことが見つかったら、家族が全力で応援するようにしているんです。
その頃、夫も今後、同じ仕事を続けていくことに不安を感じていたこともあって、思い切ってお店を閉めることにしました。
今回は私のソロプロジェクトとしてやりたいという気持ちがあったのと、それぞれの仕事や子どもの学校のことを考えて、私だけ山口県に帰ることに決めました。
夫とはいい距離感ですね。干渉しすぎず、同業種なのでこちらの状況も知っている、良き理解者です。

移住するにあたって、利用した制度などがありますか?

「中山間地域移住起業マルシェ事業」を利用しました。資金面以外にも、バックアップしていただきました。山口県や周南市、信用金庫の方とは、創業後もいろいろなご縁をいただきましたね。
開店3年目に、2階のイートインスペースにギャラリーを併設したのですが、その時はクラウドファウンディングを活用しました。資金集めはもちろんですが、ご協力、ご支援をくださった方に「私が関わった」「私の場所」と思ってもらえるようにしたかったんです。

画像:山口県へのUターンで開業・創業した先輩 仕事風景 その3

お店について教えてください。

「鹿野の良さを知ってほしい」と思って始めたお店です。 店舗は、祖父の家を改装しているんですが、この家は昔、自分の土地の木を切って、地元の方々と共に建てたそうなんです。
改装の時も、地元の業者さんや周囲に住んでいる方々と行いました。私の活動をSNSで知り共感してくださった方も、手伝いに来てくださいました。地元の木材で建てられた家を地元の人と改装し、地元の食材を使ったパンを売る。建物自体が「地産地消」されていて、お店のコンセプトが詰まっているんです。
「子たぬきのパン」では、できる限り地元の素材を使っています。山口県産の小麦粉「せときらら」の他、具材も、鹿野の食材を使っています。パン作り専用に開発してもらったペレットオーブンの燃料も山口県産です。
ただパンを売るお店ではなくて、鹿野を感じられるパン屋でありたいと思っています。イートインスペースでは、窓から茶畑や近くの野山の四季の移ろいを見ることができ、川のせせらぎや小鳥の囀りが聞こえてきます。
媒介としてお金は発生しますが、気持ちのやりとりを大切にしたいんです。そして、買って帰ったパンを誰かにあげたり、一緒に食べたりして、鹿野の魅力を知る人が広がっていったらいいなと思っています。

画像:山口県へのUターンで開業・創業した先輩 仕事風景 その3

今後の夢などがありますか?

私もこれから、だんだん体力がなくなっていくと思うので……肉体労働はそこそこに、価値を見出せる仕事をしていきたいです。ひとつには、2階のギャラリーをもっと活用していくことですね。あとは、本を書くとか、フリースクールを創るとか……いろいろ考えています。
余裕があるからこそ、心も豊かに生活できると思うので、そこそこお金は稼いでおくようにして。でもあまり無理はせず、頑張りすぎないことを頑張りたいです。

楳澤 しのぶさん

うめざわ・しのぶ/周南市在住

山口県周南市出身。福岡の調理専門学校を卒業し、その後も福岡で暮らす。夫とともに10年間飲食店を経営していたが、山口県産の小麦粉に出会いUターン・創業を決意。2018年「子たぬきのパン」をオープン。パンとお店を通して、故郷鹿野の良さを感じ、知ってほしいという気持ちから、地元産にこだわったパンを提供する。

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