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【レポート】1月19日開催YYターン!セミナー

  • YY!ターンセミナー
  • 2025.01.19

思いがけずハマった農業の魅力 山口で見つけた自分らしい生活

第6回目となる今回のセミナーテーマは「思いがけずハマった農業の魅力 山口で見つけた自分らしい生活」。周防大島町、山口市、阿武町に移住し、農業や林業に従事している上妻さん、上田さん、楠さんをゲストに迎え、移住のきっかけや農林業を選んだ理由、そしてその魅力や山口での暮らしについてお話しいただきました。

「妊娠を機に夫を手伝い始め、みかんの虜に。」

上妻 あかねさん

上妻みかん園 経営/大阪府出身

大阪府出身の上妻さんは、非農家出身ながら、農業に強い興味があり、農業高校へ進学。酪農を学んだ後に卒業後は農業アルバイトで全国を転々とされていました。そんな中、香川県のみかん農園で出会った夫についていく形で、2014年、21歳の時に周防大島町へ移住します。「みかんの島」として知られるこの町に引っ越すことを選んだ理由は、夫が独立してみかん農園を始めたいと思ったこと、そして島の自然の美しさに心を奪われたからでした。

移住後、みかん農園の候補地を探すため、島の人に会うたびに「畑を探しています」と書いた名刺を渡すという独自の方法を思いつきました。会っては渡しを繰り返しているうちに、とんとん拍子で農地を譲ってくれる方が見つかり、最終的には7反(約7,000㎡)近くの土地が集まりました。続いて、家や倉庫を探すことになった時も、まず親しくしているご近所さんに相談したところ、口コミで広がりいろいろな方が助けてくれました。結果、山も海も近い最高の場所が見つかり、思い描いていた以上に豊かな暮らしを営んでいます。

そんな上妻さんですが、実は移住当初はそこまで真剣に農業を考えていた訳ではなく、行き当たりばったりだったそうです。しかし、妊娠を機に自然と夫を手伝うようになり、気づけばすっかり農業の魅力に引き込まれていきました。農作業に夢中になるあまり、産気づいていることにも気づかないほどだったとか?!

一からはじめた上妻みかん園の経営も軌道にのり、現在はみかん狩りやみかんの木で製作したアクセサリーの販売など新しい事業を展開されています。そのほかにも、子どもたちに食の大切さを教えるため、地元の小学校でみかんの授業も行っています。

移住して11年、あらゆる場面で人とのつながりの大切さを実感してきた上妻さん。移住当初は同世代が少ない島暮らしに戸惑いもあったそうですが、農業を通じて出来た地域とのつながりは年齢を問わず深くなり「娘には80歳差の友達がいます」と笑います。
365日ずっと寄り添わなくてはならない農業だからこそ、オンとオフを切り替え、仕事と家庭を両立させるため夫婦で家事を分担する事が大事とのこと。「夏場、仕事の合間に気分転換で子どもと海にダイブすることもありますよ」と笑顔で語る上妻さんが目指す「楽しい農業」について、もっと知りたいと思いました。

「大好きな自然と関わる仕事を探す中で出会った林業」

上田 悠右さん

スオウ架線株式会社/大阪府出身

出身地である大阪の郵便局に勤務していた上田さん。大学の頃から環境教育のボランティア活動に参加されており、就職後も「大阪の街なかで働きながら、休日は奈良の山林や里山で子どもたちと一緒に学ぶ活動する」という生活を続けていました。

そんな環境教育のボランティア活動を通して知り合った奥様は、横浜に住みながら山口で活動されていました。大阪と横浜での遠距離恋愛を経て、いよいよ結婚することになった際に「山口で一緒に住むのはどう?」と奥様から提案されたのがきっかけで山口への移住を考え始めたそうです。

まったく馴染みのない土地への移住に不安しかなかった上田さん。しかし、実際に訪れてみると、その自然環境の素晴らしさに驚きました。大阪にいた時は自然の中へ遊びに行くとなると一日がかりでしたが、山口市は山も海も近く、街と自然がこんなに近い場所はなかなかないと感じたそうです。それが、移住を決める大きな理由の一つでした。

移住後、上田さんは大好きな自然と関わる仕事を探す中で林業と出会いました。県主催の森の仕事見学ツアーも、林業現場を体感することで大きな刺激になったそうです。最終的には木材生産に当たって架線を使用する特殊業務に惹かれ、スオウ架線株式会社に就職しました。

林業の世界に入るまで全く知らなかったそうですが、林業には様々な資格が必要になります。就職が決まってからは県農林総合技術センターに通い、支援制度を利用しながら業務に必要な資格を一つずつ取得されました。
「林業の世界では、会社に関係なく、県内で同じタイミングで就業した人が同期となります。一緒に研修を受ける中で仲良くなり、プライベートでも遊ぶようになりました。山口に知り合いのいない自分にとって同期とのつながりはありがたく、とても助けられました。」とのこと。上田さんは、同期を通じて仕事のことだけではなく、山口県を深く知ることができたそうです。

そんな上田さんの現在の仕事は、まずチェーンソーで30メートルくらいある木を倒し、ワイヤーで吊って運び出したものを、3~4メートルの丸太に造材します。その丸太をトラックに乗せて市場に運びます。山の中での作業のため、当然夏は暑く、冬は寒い。また力仕事のため体力的にはきついこともありますが、思っていた以上にやりがいがあり、すっかり夢中になっています。

3年目を迎え、まだまだ一人前とは言えないですが、先輩の足元にも及ばないということはなくなり、ある程度仕事を任されるようになってきたという上田さん。
仕事のやりがいはなんですかという問いに、「海を見渡せる絶景だったり、山の木漏れ日の中で小鳥のさえずりを聞きながら休憩したり、ご飯を食べたりするのは本当に格別で、オフィス仕事では得られないこの充実感が素晴らしい魅力です」と嬉しそうに答えておられるのが印象的でした。

休みの日には妻や仲間と釣りや山菜狩りを楽しんだり、趣味の木工を生かして子ども相手に野外学習のボランティアをしたりと、プライベートも大いに充実している様子。結婚を機に都会の生活を離れてやってきた山口県。町と自然がほどよく調和した暮らしは、上田さんにとって新しい発見と成長の連続でした。

「好きなことを仕事にしたい」と一歩を踏み出した上田さんにとって、刺激にあふれた毎日はこれからも続くことでしょう。

「何気なく立ち寄った相談ブースから農業の道へ」

楠 和之さん

農事組合法人 福の里/東京都出身

東京出身の楠さんは、元々読書が大好きで、あまり社交的なタイプではありませんでした。書店員として大好きな本に囲まれて働くことに憧れ、埼玉にある老舗大型書店に就職しましたが、入社後半年で営業職へ。ずっと「本に囲まれて仕事がしたい」と願っていたものの、現実はなかなか簡単ではありませんでした。当初から営業は向いていないと感じながら、その後15年間勤め上げることになりました。

理想と現実の間で葛藤しつつ、東京で慌ただしく働くうちに、昔から好きな老子や荘子といった中国の偉人たちの隠居生活への憧れが徐々に大きくなっていきました。身体が動くうちに自分もそういう人生を送りたいと考えるようになったそうです。

その後、家族の事情で東京の実家を手放すことになった際に「東京では終の住処は見つからない」と改めて感じた楠さん。そこから本格的に移住を検討し始め、結果、行き先として選んだのは母親の故郷である山口県でした。

移住先を山口に決めて情報収集を進める中、ある時東京で開催された山口県主催の「おいでませ山口!UJIターン就職説明会」へ参加。漠然と一般企業への転職で考えていたのですが、何気なく立ち寄った農林振興公社のブースで話を聞くうちに、「人とあまり関わらずにできる仕事なのかもしれない」と農業に興味を持たれたそうです。

さらに楠さんは移住ツアーにも参加されました。山口県立農業大学校で就農のための研修中だった先輩移住者や、地元の農家の方から生の声を聞き、実際に農作業を体験していくうちに農業への興味はますます深まっていきました。長年の営業職に疲れた楠さんにとって、無理にコミュニケーションを取らなくても、誠実に真面目に働けば問題ない仕事はとても魅力的に映ったそうです。

山口への移住後、楠さんは国及び県の支援制度を活用し、一から農業を学ぶために農業大学校に通い始めました。1年間の研修中に、なんと13個もの資格を取得。その間、格安で提供される寮に住みながら、月1万円未満という低コストで充実した生活を送りました。ふとした瞬間に見上げる空や山々の景色は、疲れた心を癒やし、移住したことへの実感を日々噛みしめさせてくれました。

研修を終えた楠さんは、阿武町の農事組合法人 福の里に就職します。「福の里」は主にお米を生産している法人で、阿武町内130の組合農家で構成されています。従業員は楠さん含め3人で全て30~40代。組合農家と従業員が協働して115ヘクタールの農地管理・生産しています。

また農業大学校での研修中には人生を変える大きな出会いもありました。年上の同期からの「結婚はいいものだよ」という言葉にあと押しされ、婚活パーティに参加。そこで現在の奥様と出会い、農大研修中に付き合い始めました。就農すれば収入が下がることはわかっていたので一生独身でいるつもりだったそうですが、そんな状況も奥様は理解してくださり、めでたく結婚することになりました。

楠さんの移住は、もともとは「隠居生活への憧れ」から始まりましたが、結果一から農業を始め、家庭を築くという「新たな挑戦」へと繋がりました。
阿武町定住奨励金などを活用して建てたモデルハウスのような新居には、大好きな読書を楽しむための一人用の書斎も作られました。都会の喧騒から離れて自然と向き合い、必要最低限の人間関係で満ち足りた日々を送ることができる山口での暮らしは、楠さんにとって理想的なライフスタイルとなっています。

「気になるアレ、教えて!」

移住に関するよくある疑問に一問一答

Q:気になるお金(収入)のこと、活用した支援は?

楠さん:農業大学校に通っていたときは無職だったため、前年の税金をまとめて支払う必要がありました。個人差がありますが私の場合、約80万円でした。このことについては、移住ツアーで出会った先輩移住者さんから事前に教えてもらったので、とても助かりました。税金に関する情報を事前にしっかりと集めておくことが大切です。

上田さん:移住ツアーに参加した際、宿泊費や交通費の補助を受けられたのはとても助かりました。また資格取得についても会社がサポート体制を整えてくれていたので資格取得のための補助や勉強時間の確保もしてもらえました。市の担当者との顔つなぎや、相談会で積極的に質問するなど、相談窓口をうまく活用することが大切だと思います。

上妻さん:夫がJAで1年間研修を受講する際に150万円が支給されました。さらに、2~3年経った後、私も参加し夫婦で農業をすることになったので、年間225万円の支援を受けました。もともとはお金がなくてもなんとかなると思えるタイプでしたが、やはり収入が少しでもあればありがたいし、こうした支援情報は知っておいた方がいいと思います。
移住前の収入を維持したいと思うのであれば、必要な収入を得るためには、自分が作る作物でどれだけの量を生産すればいいのかを逆算してみると良いでしょう。移住先の物価をスーパーなどで確認するのも良い方法です。移住先での生活をイメージして、準備をしっかりしておくことが大事だと思います。

Q:始める前に知っておいたら良かったことは?

上田さん:苗木を植えてから伐採して収穫するまでには、約50年かかります。そのため、林業の仕事には大きく分けて「造林保育部門」と「素材生産部門」の2つがあります。どちらをメインにしている林業事業体かを事前に調べておくと良いでしょう。造林保育は植林や下刈りを行い、素材生産は皆伐や間伐等で木材生産を進めていく業務です。自分にどちらが向いているか、またどんな働き方をしたいかを事前に把握しておくことが大切です。
さらに、移住ツアーに参加することで、移住後の生活をより具体的にイメージし、自分の希望に合った選択をできるように準備しておくと良いと思います。

Q:こんな人に向いているかも!

上妻さん:農業は24時間365日働こうと思えば働けてしまう仕事なので、体がもたない可能性があります。そのため、オンとオフの切り替えがしっかりできる人が向いていると思います。また、作物を育てて消費者に届ける仕事なので、誠実さが求められると感じています。

上田さん:体を動かしたいのであれば、チェンソーを使って伐採していく仕事が向いています。一方、苗木を植える造林保育の仕事は、小さな苗木が50年後に大きな商品になるという、時間がかかるけれども尊い仕事です。木の一本一本が大切で、それが誰かの家になっていると考えると、とても意味のある仕事だと感じます。木が好きな人には向いている仕事だと思います。

Q:年間どのくらいお休みがありますか?

上妻さん:土日は休みですが、子供の行事などがあればその日はお休みにしています。収穫時期や繁忙期には土日も働くことがあります。

上田さん:月に7日は休みで、日曜日は固定でお休みです。

楠さん:法人で働くか、個人で働くかによっても異なります。私は法人に勤めているため、繁忙期には何週間も連勤になることがあります。冬場や農閑期には、週休2日で休めることが多いです。どんな雇用形態があるのかを事前に調べておくことが大切です。

Q:オフの過ごし方について教えてください。

上妻さん:知り合いの漁師さんから魚をたくさんもらえるので、それを友達にふるまったりします。あとは、自宅にサウナがある方のお家に呼ばれて遊びに行ったりもしています。

上田さん:山菜を採ったり、釣りをしたり、木工を楽しんでいます。また、移住の関係で知り合った人と遊んだり、ボランティア活動を一緒にしたりしています。プライベートが仕事に繋がることもありますよ。

楠さん:自室で読書をするのが最高の時間です。

Q:これから就農をめざす方にメッセージがあれば

上妻さん:楽しいことばかりではありません。自分ではどうしようもない、天候や市場の価格に左右されることもあります。販売が順調でも売るものがないこともあり、モヤモヤすることもあります。でもそれらを含めて楽しめるようになると一番いいと思います。夫と一緒にみかんを作りながら、辛いことも含めてそれが10年後、20年後、あるいは来年には自分の力になるかもしれません。それをひっくるめて楽しんでください。

上田さん:林業はイメージしにくい職業かもしれませんが、実際にやってみると結構面白いです。木についてよく知ることができ、木の素晴らしさや山の良さを肌で感じることができます。林業は担い手不足とも言われているので、就業しやすい分野です。興味がある方はまずは相談してみてください。

楠さん:相談に乗ってくれた方々に助けられ、移住して本当に良かったと感じています。みなさんも覚悟を持って挑戦すれば、良い選択肢になると思います。

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