2022年イベントレポート(第4回)
- YY!ターンセミナー
- 2022.10.02
2022年10月2日開催 山口とつながるpart.1
〜地域へのイリグチからシゴトまで〜
今年度の「YY!ターンカレッジ」は「やまぐちへの入口」をコンセプトとして、「やまぐち暮らし」の魅力を発見していただいています。
第4回目となる今回のテーマは「山口とつながるpart.1〜地域へのイリグチからシゴトまで〜」。萩市と鎌倉市の2拠点で活躍されている新井さんと萩市役所のお二人をゲストに迎え、地域とのつながりやその魅力などについてお話ししていただきました。
伝建地区の町屋を再生。いつしか、まちのために
◉新井 達夫さん
現在、萩市浜崎地区で3つの施設(※)を運営されているb.note Corp.代表取締役の新井さんが、萩市に通い始められ、今年で8年目になります。今では萩市と移住者とをつなぐキーパーソンとして、頼りにされる存在です。新井さんがYY!ターンカレッジにゲストとして出演されるのは、2019年に続いて2回目。最初に、前回の内容を簡単に振り返り、それ以降の活動を話してくださいました。
3つの施設
もともと鎌倉を拠点にされていた新井さんは、2015年に知人の紹介で萩市を訪問。その時、重要伝統的建造物群保存地区で、漁港もある浜崎をとても気に入られたそうです。しかし、「せっかくの風情ある街並みが活かされていない。もったいない」と感じたことから、自らが空き家の再生に取り組まれることになりました。
「もう萩に8年通っていますからね(笑)」と話される新井さんですが、最初の頃は、「仏壇があるから」や「思い入れがあるから」となかなか空き家を譲ってもらえなかったそうです。本当に家が崩れ始めた頃に、手放したいと言って来られる方がほとんどで、実際のところ直すのは大変なことだそうです。それでも新井さんが挑戦し続けられるのには、理由がありました。
ある日、「舸子176」のそばにある和菓子店の暖簾が新調されていました。その理由を「最近、人がよく出歩いているから、暖簾を新しくされたようです」と和菓子店のお店の方が話されていたことをスタッフから聞かれました。
「僕たちは飲食店をやりたいから飲食店を作る。ホテルをやりたいからホテルを作っています。『まちのため』とかそんな大それたことは考えていませんし、僕たちの事業でまちを変えられるなんて思っていません。でも、和菓子店の暖簾の話を聞いて、まちの人たちの気持ちが変化していることを知りました。そして、まちの人たちの気持ちが変われば、まち自体も変わっていくかもしれないと思うようになったんです。だから、まだまだやらなきゃなと思っています」と話してくださいました。
「自分たちのやりたいことをやっているだけ」と話される新井さんですが、3つの施設には萩市に興味を持つ人がたくさん訪れ、新井さんの考えに共感し、移住されたスタッフもいらっしゃるなど、確実に移住者の入口となられています。新井さんは活動を展開する中で、萩市の人々と見事に距離を縮められ、今では萩市にとって、なくてはならないキーパーソンとなられました。
また、移住については、「移住するということは、住む場所も働き方も生き方も決めるようなものなので、全部を決めるのは大変だろうなと思います。だから、とりあえず、まずは行きたい場所に行ってみてはいかがでしょうか? 今日をきっかけに『萩に行ってみたいな』と思ったら、行った方がいいと思います。萩の魅力にどっぷりハマっている私からすると、東京や鎌倉の人に『萩に行ったことある?』と聞くと、『1回ある』と回数で答えられるのは、ちょっと悲しいです。観光ではなく、『人に会う』ために萩に足を運んでもらいたいです。人に会うのなら、回数は関係ないですからね。どこの地域に行くのもそうですが、人との出会いを大切にし、ぜひその人に会うために何度も行って欲しいです。そんな感じで2拠点目を作ると、すごく人生が楽しめると思います」と話されました。
「人」とつながり、自ら活動
◉大平 憲二さん
萩市役所にお勤めの大平さんの主な仕事は、サテライトオフィスの誘致です。萩市は、2022年4月に、旧明倫小学校の校舎を活用した「萩・明倫学舎」内にコワーキングスペースとサテライトオフィスを開設。「働く場所は、地元の人にも移住して来られる人にも大切な場所。萩市にどんどん新しい職種をつくっていこうと頑張っています」と大平さんは話されます。現在、首都圏から5社のIT関連企業が進出し、空き家や空き施設を活かしたさまざまなオフィススタイルを展開されているそうです。
大平さんが仕事をする上で大切だと考えているのは、「人とのつながり」です。それに気付かれたのは、今から13年前に密かに立ち上げた任意団体『萩LOVE』での活動です。「当時の私は36歳で、よく仲間内で萩市に対する愚痴を言っていました。でも、たくさん愚痴る割には、何も変わっていない。愚痴を言うならできることをやればいいと思って『萩LOVE』を立ち上げたんです。『まちづくり』なんて意識はありませんでした。ただ単純に愚痴を言ってるだけの状態が嫌だったんです」と話され、当時、ホームページを立ち上げて、少しずつ活動を展開していったことを教えてくださいました。
これまでに『萩LOVE』の活動として、浜崎地区の旧萩藩御船倉でコンサートの開催や、クラウドファンディングを活用して、当時、Dragon Ashのダンサーとして活躍していたATSUSHIさんとドラマー中村達也さんのお二人によるパフォーマンスユニットの招致、東京都杉並区にあるスペイン料理とワインのお店のシェフとタッグを組んで、豊洲で開催された「ご当地パエリア選手権」への出場などに取り組まれた大平さん。人とのつながりがもたらしてくれたご縁で始まり、ちょっとしたつながりがどんどん広がり、それが仕事にもつながっているそうです。
「まずは萩市の誰かとつながってみてください。移住も仕事も人のつながりとかご縁だと思います。ぜひ一度萩市にお越しください。移住相談窓口を利用していただければ、インターネットに出てこない企業の求人情報なども案内できると思います。今日の日のご縁が続くと嬉しいです」と呼びかけられました。
萩暮らしの案内人として、次々と出会いを創出
◉釼物 佳代子さん
萩市への移住・定住の促進に取り組まれている釼物さん。2022年4月、空き家情報の案内等の定住総合相談窓口や、萩と関わりたい人と地域を結ぶ拠点として、「萩・明倫学舎」内にオープンした「はぎポルト‐暮らしの案内所‐」の立ち上げや運営に携わられています。
今、釼物さんが取り組まれていることの一つが、JR三見駅の駅舎を「お試し暮らし住宅」に改修することです。萩市には、萩の風土や日常生活を実際に体験していただく「お試し暮らし住宅」として、長州藩武具方御用達商人・梅屋七兵衛の旧宅をリノベーションした住宅「愛称:#梅ちゃんち」が既にありますが、テレワークやワーケーションをイメージし、萩市中山間地域の長閑な自然が満喫できる「お試し暮らし住宅」としてJR三見駅の駅舎を改修し、令和5年2月にオープン予定とのことです。
また、釼物さんは、5年前から萩市を知ってもらい、萩市のファンになってもらうことを目的とした旅企画「萩・ひとに出会う旅」にも携わっておられ、来年の3月に3年ぶりに開催予定とのことです。「萩・ひとに出会う旅」は、観光地を巡る旅ではなく、「萩市に来たら会って欲しい人」にどんどん会いに行く旅だそうです。これまでの旅で出会った人が、萩市にまた足を運ばれたり、今回のように釼物さんが東京でイベントに参加する際などは会いに来てくださるそうで、萩市のファンは順調に増えている様子です。「以前は女子旅でしたが、今回は男女ともに募集しますので、ぜひご参加ください」と呼びかけられ、移住を決めるには「人に会うことが大切」と話されました。
実は、釼物さんは萩市出身者ではありません。幼い頃にお父様の転勤の関係でちょっとだけ萩に住まれたそうで、その時の萩の街並みの印象が強く、社会人になるとき、「さて、どこで働こうか?」と思った際に、迷わず萩を選ばれたそうです。「ちょっとだけ住んだ」ことが今の釼物さんにつながっています。「まずは、ぜひ萩市にちょっと来てみる。萩市をちょっと歩いてみるっていうことをしてみてください」と伝えられました。
現在の萩市の取り組みや様子を知っていただくことで、萩市とのつながりや関わりが生まれるきっかけとなったのでは思います。会場の和やかな雰囲気が印象的な時間となりました。
新井 達夫(あらい たつお)氏
b.note Corp.代表取締役
萩出身の藤田伝三郎氏を創始者とする藤田観光(株)を経て、2009年に(株)b.noteを設立。長年、非公開だった鎌倉市内の歴史的建造物を「古我邸」として、フレンチレストラン、ウェディング空間として再生させる。
萩市浜崎地区でも、伝建指定建物4棟を活用し、飲食、物販、宿泊、イベントスペースとして運営し、今年7月にはプロジェクトの中心的な施設として「舸子176」をオープン。宇部市生まれ。
大平 憲二(おおひら けんじ)氏
萩市商工観光部 企業誘致推進課 課長
2015年から、企業と人材の流入を促すことで、雇用の場を創出する「萩サテライトオフィスプロジェクト」に取り組み、サテライトオフィスの誘致により、新たな人材交流を地域の活力創生等につなげる。萩市生まれ。
釼物 佳代子(けんもつ かよこ)氏
萩市総合政策部おいでませ、豊かな暮らし応援課 課長補佐
2017年から、萩市への移住・定住の促進に取り組み、今年4月にオープンした、萩への移住や萩と関わりたい人と地域を結ぶ拠点「はぎポルト‐暮らしの案内所‐」の立ち上げ・運営に携わる。山口市生まれ。