Vol.32023.11.16
Vol.32023.11.26
井上 健さん(31)
移住前の居住地
:神奈川県川崎市移住前の仕事
:飲食店勤務移住後の居住地
:山口県山口市移住後の仕事
:地域おこし協力隊仕事で訪れたことをきっかけに山口が好きになり、何度も通ううちに移住を考え始めた井上さん。とはいえ移住先で何をやるべきか分からず、足を踏み出せずに日々は過ぎ行き…。そんな彼の背中を押したのは、移住相談員が薦めてくれた地域おこし協力隊の制度でした。
東京生まれ、東京育ち。立川のバーで働いていた普通の青年、地域おこし協力隊になる―。戸惑いながらも新しい仕事「農業」に取り組む若者の挑戦をご紹介します。
井上さんが山口県に興味を持ったきっかけは、山口市阿知須エリアにある山口きらら博記念公園で2018年に開催された日本最大級の花と緑の祭典「山口ゆめ花博(第35回全国都市緑化やまぐちフェア)」でした。過去に東京・八王子で開催された同イベントに携わった経験を買われ、約3ヶ月間山口に滞在し、空港と会場を結ぶシャトルバスの運行管理や来場者のアテンドを行いました。
「当時の仕事仲間と仲良くなって、イベントが終了して東京に戻ってからも、山口にはちょこちょこ遊びに来ていたんです。会場となった山口きらら博記念公園の美しさにも惚れ込んで、山口への移住を意識するようになりました。いつか田舎に住んでみたいという漠然とした想いもずっと抱いていました」
山口きらら博記念公園は、海を望む広大な敷地に豊かな緑と季節ごとに咲く花々が美しく、散策スポットとして地域の人々に親しまれている場所。運動公園やコンサートなどのイベント会場としても人気です。
東京に帰ってからのある日、一度話でも聞いてみようと軽い気持ちで訪れたのが、東京・有楽町の移住相談窓口「やまぐち暮らし東京支援センター」でした。そこで相談員の平尾さんから「地域おこし協力隊」という制度があることを教わった井上さん。
「地域おこし協力隊として活動すれば、山口暮らしのスタートは何かとスムーズかもしれない」と考えるようになりました。
東京で暮らしながら、時折は相談窓口を訪れて就職相談をしたり、移住フォーラムに参加して先輩の声を聞いたり、移住ツアーに参加したり。ただ漠然と思い浮かべていた「移住」が、井上さんの中で少しずつ具体化し、現実のものに近づいていきます。どうせなら山口きらら博記念公園の近くに移住したいと考えていた井上さん。タイミングよく、阿知須エリアでの地域おこし協力隊の募集があり、ついに移住に向けて大きな一歩を踏み出しました。
「20代後半から移住について考えるようになったのですが、20代はふらふらしちゃったなーという思いもあって。地域おこし協力隊のお話をいただいて、ちょうど30歳になる節目でもあるし、良いきっかけだからやってみようと思いました」
相談員の平尾さんは、井上さんを心配し「地域おこし協力隊を勧めたのは私だけど、さすがに農業は大変だからやめておいた方がいいのでは?」とアドバイスしたそう。それでも、ミッションが大変かどうかよりも阿知須に関われる魅力に引かれたという井上さん。
瀬戸内海に面した阿知須エリアは、海の幸に恵まれた土地。さらに農業も盛んで、強い甘みと栗のようにホクホクとした食感が特徴のカボチャ「くりまさる」が有名です。今、井上さんは道の駅『きらら あじす』で販売する新たな野菜の発掘をテーマに地域おこし協力隊として活動しています。任期は3年。着任後、まずは地元の農業法人で研修があり、その後は自分で管理する畑を任され、ホウレンソウやスイスチャード、ジャガイモ、カブなどを試験栽培しているそう。
「東京ではバーで働いていたので昼夜逆転の生活で、まず生活リズムを整えるのに苦労しました。先輩農家さんたちについていくのが精一杯…。今は、特産品のくりまさるに次ぐブランド野菜を開発するべく、先輩に教わりながら試験栽培をしています。ほんの少しですが、道の駅で実際に販売もしているんですよ!」
地域おこし協力隊は、給料の支給があり安定した収入が得られ、自治体が住まいも準備してくれるというメリットがあります。しかし井上さん曰く「一番のポイントは地域とのつながりが出来やすいところ」とのこと。
「移住はしたいけど、その先で何をしたらいいんだろう、何ができるんだろう、という不安はありました。地域に馴染めるのだろうかという不安も。ところが講習会やセミナーに参加して地域おこし協力隊だと自己紹介すると、横・縦のつながりがどんどん広がって。東京から来た何者でもない僕を地域の方がスッと受け入れてくれたり、先輩農家さんとのつながりがしっかりできたのは、地域おこし協力隊という肩書きのおかげです」
地域おこし協力隊であることに全く気負いがなく、むしろそのポジションをうまく活かして地域の人々とつながれる井上さんの向き合い方には、正直ハッとさせられました。
移住をしてみて、山口市での実際の暮らしについても聞いてみました。
「東京では車の運転をしていませんでしたが、農業に車は必須。しかも狭い農道を移動したりするんですけど、2回も畑に落ちちゃいました…。農家の方がトラクターで引き上げてくれたり、周囲の方が一緒に車を押してくれて事なきを得たのですが、山口での暮らしに合わせて、もっと運転に慣れておくべきでした。それと、東京ではデリバリーに頼りすぎていたので、もっと自炊能力を身につけておけば良かったなと身にしみて感じています」
日々奮闘する井上さん、苦労は多いながらも、新鮮さや楽しさのほうが勝る様子。農業をしていなければ出会うことがなかった人たちに出会え、たくさんの刺激をもらっているそうです。今後は、ミニ大根の栽培と普及、そして漬物などの加工品にも力を入れていきたいと語ってくれました。
「地域おこし協力隊の任期は2025年9月までです。その後の具体的な活動はまだ悩んでいる途中ですが、ここに住んでいたいという想いはあります。そして食に関わる仕事をしていたい。農業の経験や生産者とのつながりを生かせる何かに挑戦したいですね」
「大好きな山口へ住みたい」という思いを実現するために地域おこし協力隊となった井上さん。移住後もその立場は地域との関わりを生むための心強い味方となりました。
最後に井上さんから、移住の先輩としてのアドバイスをいただきました。
「移住者向けのツアーに参加するのがおすすめです。個人で見て回るのには限界があるし、観光地が中心になるなどどうしても偏ってしまう。参加者同士のつながりが生まれるのも魅力で、移住に関するリアルな情報交換ができるので、僕は参加してめちゃくちゃ良かったです! ツアーで出会った友人が、萩市に移住してきたので、今もつながりがあります。観光ではない、地域の特性を知るためには、移住者ツアーが一番です!」
移住を検討している方向けのツアーとしては、オーダーメイドのツアーや市町主催のツアー情報など、山口県移住相談窓口『やまぐち暮らし東京支援センター』でご案内しています。お気軽にお問い合わせください。
また、移住検討のためツアーやイベントへの参加、下見などで山口を訪れる場合は、交通費の一部を補助する『YY!ターン支援交通費補助金』をご活用いただけます。ぜひそちらの情報もチェックしてください!
井上さんも訪れた東京・有楽町の移住相談窓口・やまぐち暮らし東京支援センターは、ただ山口のことを聞いてみたい方でも大丈夫。移住者向けのツアー情報もこちらでご案内しています。お気軽に足を運んでみてください。もちろんオンラインでも相談を受け付けていますので、お近くにお住まいでない場合やお時間がなかなか取れない方でもお気軽にお問い合わせを。